私がPI値(Purchase Index)と出会ってからもう10年以上が過ぎた。その間、一貫してPI値の研究開発を続けてきたといってよい。最近ではPI値からPPI(Personal Purchase Index)、そしてTI(Time Index)へと研究は広がり、商品管理だけではなく、顧客管理、それらの融合へと進みつつある。ここでは、それらの基本であり、原点のPI値についてその基礎概念を述べてみたい。
PI値とは何か?
PI値とはお客さまのニーズを、商品を通じてPI値に変換し、その指標をもとに顧客指向にもとづく企業の活性化を実施していくための商品(経営)管理指標である。そして、その基本となる方程式がMD方程式であり、この方程式をもとに企業活性化の様々なシステムが生み出されていく。このように、 PI値は、商品の動きをお客さまの声へと変換するものであり、この指標をいかに活用するかが、小売業、製造業、ひいては流通業全体の大きな課題といえる。ただし、この指標は当然、お客さまの消費量に制約され、その後は、上限を維持しつつ、金額PI値、粗利PI値、経費PI値へという方向が課題となる。 これまで、PI値は金額PI値を中心に研究開発がなされてきた。そして、最近では、客数が新たな研究対象となり、今後、さらに粗利PI値、経費PI値が研究課題となっていく。また、数量PI値、金額PI値までは、マーチャンダイジング領域としてとらえられるが、粗利PI値、経費PI値はマーケティング・メネジメント領域としてとらえることがポイントである。
1. PI値の算出方法
PI値とは、ひとことでいえば次の式で表させる商品管理のためのマーチャンダイジング指標であるといえる。すなわち、PI値=買上点数÷客数 であるが、ここで、注意しておかなければならないポイントが2つある。それは、PI値をどう指標化するかという点と客数をどうとらえるかという点である。
PI値の指標化と客数把握のポイント
まず、PI値をどう指標化するかについては、私は、もっぱら、%(パーセント)、すなわち、100人当たりの買上点数として指標化しているが、企業によっては、1000人当たりの場合もあれば、そのまま1人当たりの買上点数として指標化しているところもある。これは基本的にはどの指標を使おうが自由であり、要は、PI値を活用する上において、一番その企業にとって現実的な指標を採用すればよい。ちなみに、私が%にこだわっている理由は、PI値をお客さまの支持率としてとらえ、来店されたお客さまの何人の方が商品を支持していただいたかという、顧客満足度の指標としてとらえたいからである。次に、PI値を算出するための客数のとらえ方であるが、原則として客数は、レジ通過の全客数としてとらえている。企業によっては、部門ごとに客数を算出し、部門客数で算出するところもある。これも基本的には自由であるが、私としては、単品から小分類、さらには、大分類までを店舗全体から位置づけたいがために店舗全体のレジ通過客数としている。 このように定義すると、PI値を誰でも自由に使いこなすことが可能になる。PI値とは本当に自由な指標であり、単品から、小分類、中分類、大分類、店舗全体まで、さらに、ちらし、エンド、平台でも算出が可能であり、さらには、パート、従業員、店長、バイヤーまでPI値で指標化ができてしまう。しかも、時間は日、週、月、季節、年間から時間、分、秒でも自由に指標化が可能である。さらには、そもそも、お客さま1人当たりの指標だから、規模の大小は問わずに指標化が可能であり、PI値羅針盤等を活用することにより、店舗ごとの問題点が一目瞭然となってしまうので、特に、チェーンストアーにとっては最良のマーチャンダイジングの比較指標といってもよい。
基準値構築がPI値活用の最大のポイント
そこで、これら比較をするためにどうしても避けて通れないものが基準値である。PI値を理解し、現場に活用していくためには基準値をどう設定するかが最大のテーマといっても過言でない。基準値のとらえ方は、大きく3つある。ひとつは、時間で基準値をとらえていく方法で、単純にいえば移動平均を基準値とすることである。したがって昨週、昨月、3ケ月前、昨年等があり、過去のデータが整備されていれば季節性も考慮できる昨年対比がベターであろう。ふたつめは平均で基準値をとらえていく方法で、これは、チェーンストアー全店の平均、全国基準値があれば全国基準値との平均を基準値とすることである。いずれ、PI値の研究が全国的規模になれば、全国および地域別基準値が発表できるようになろう。そして、もうひとつの基準値が目標値である。これは、十分にPI値の研修を積んだ企業が自店平均、業界平均にとらわれない、自らの目標を設定できるようになり、どこまで、プラス発想で取り組めるかによって決まる基準値、というよりも、目標値であるといえる。このようにPI値を活用するには、様々な基準値を設定することが大きなポイントとなる。 これらの比較以外にも、PI値を活用していく上においては、様々な基準値を設定して現実の世界を把握することがポイントとなる。ちなみに、私がPI値の研究をはじめて、最初につくった基準値はPI値1%である。これは、単品で1%を超えるものをA商品として選定したところ、これまで、どんなスーパーマーケットで実践しても、その単品は1店舗約1万ある単品の中でわずか200前後の単品しかないということがわかった。当初は、なぜそうなるのかがわからなかったのだが、いまでは、それは、人間の食生活をささえる商品は、日本全国、極論すれば約200品に限定できると結論づけている。しかも、どんなスーパーマーケットもNo.1の商品は牛乳であり、そのPI値は単品で10%強という値である。これをもって、私はPI値とは、お客さまの食生活をささえる顧客満足度を見事に表す指標であるといっても過言ではないと考えている。したがって、このことを逆に考えれば、スーパーマーケットの活性化はこの200品からはじまるといってもよく、この200品を絶対に欠品させることなく、鮮度よく、品質を高めていくことが最初の活性化の課題となる。
2. PI値と売上アップとの関係について
このように、PI値は、マーチャンダイジング構築にとっては非常に便利な指標ではあるが、この指標を活用することにより、企業にとってもっとも大事な売上アップに結びつくのか否かが問われる。よく、クライアントから受ける質問は、「PI値はわかった、でも、それで、売上あがるの?」という問いである。そこで、ここでは、その質問に答えるために、PI値と売上との関係を考えてみたい。 そもそも売上とは、一般に次の式で表すことができる。すなわち、売上=買上点数×平均単価 これは、どんな企業も例外なく、活用ている一般的な売上の方程式である。しかし、小売業は、この方程式に、客数を加え、売上=客数×{(買上点数×平均単価)÷客数}=客数×客単価 という方程式を活用している。これは、小売業は基本的に客商売であるがゆえに、あえて客数という概念を導入して売上をとらえようとしたのであろう。 ところが、PI値=買上点数÷客数であるので、上の式は、売上=客数×{(買上点数×平均単価)÷客 数}=客数×{(買上点÷客数)×平均単価}}=客数×PI値×平均単価(=客数×金額PI値(客単価)) と変形できる。そこで、さらに、この式をPI値を基準に並びかえると、売上=PI値×平均単価 ×客数(=金額PI値(客単価)×客数) となる。私は、この方程式を、MD方程式(マーチャンダイジング)と名付け、PI値理論の根幹にすえ、現在では、PI値の基本方程式として位置づけている。この方程式を開発したことにより、PI値は単なるマーチャンダイジグの一指標から、売上アップのためのマーチャンダイジング上の根幹の指標となったといってもよい。すなわち、PI値とは、売上アップをはかる上において、最初に取り組まなければならない課題であり、次が、平均単価アップであり、最終的には客数アップであるということが理論化されたのである。しかも、PI値はきわめて現場の商品管理、具体的には数量管理と鮮度管理が基本であり、平均単価は本部の品揃え、原価交渉が基本であり、客数は経営者の商圏設定、立地選定が基本であるということがわかる。
3.PI値アップは客単価アップが目的である!
ここで、もうひとつ大事なことが明確になる。すなわち、MD方程式が示すように、売上=PI値×平均単価×客数(= 金額PI値(客単価)×客数) であるので、金額PI値(客単価)=PI値×平均単価 となる。ちなみに、この客単価のことを、別称、金額PI値とも呼び、PI値をそれと区別するために数量PI値と呼んでもよい。PI値とは、基本的にお客さま1人当りの指標のことであり、他にも、粗利PI値、経費PI値等も理論的には指標化が可能である。さて、この金額PI値(客単価)をグラフ化すると、経済学の需要曲線になる。実は、マーチャンダイジングとは、ひとことでいえば、このグラフの需要曲線を右上にもっていくすべての企業努力であるといえる。したがって、ある政策を実施した場合に、このグラフが右上にいかなければ、その政策は基本的に間違っているといってもよい。PI値とは、その意味でマーチャンダイジングの根幹の指標といえる。 しかも、このグラフが示しているようにPI値とは、金額PI値(客単価)の根幹であり、さらに、金額PI値(客単価)は、PI値も平均単価も基準値よりも高い状態から、PI値も平均単価も基準値よりも低い状態までの評価が可能であり、金額PI値(客単価)が上がった場合も、下がった場合も、どのような状況であるかを6段階で判断し、的確な処置をうつことがPI値を活用するポイントになる。PI値は、このように金額PI値(客単価)アップの根幹の指標である。
PI値は小分類管理が決めて!
ここで、さらにPI値を活用するポイントとして、単品よりも小分類の方が活用しやすいということがいえる。なぜならPI値だけに着目すると、どうしても単品管理になりがちになり、これが極端に進むと(ディスカウントストアー等)になってしまい、金額PI値(客単価)が落ちてしまう現象が起こる。これを防ぐためには、平均単価との関係を見直し、どの単品がPI値アップに貢献し、どの単品が平均単価アップに貢献するかをバランスよく品揃えし、よい方向に商品を導いていくことが課題となる。そして、そのためには、一単品のみにとらわれることなく、商品群を全体としてして管理することが求められる。そして、それが、ひいては、企業全体を右上のよい方向に導くことにつながるのである。これは、PI値の活用は単品管理ではなく、小分類管理に重点おいて実施することが基本になるということを意味し、その中で、PI値に貢献している単品、平均単価に貢献している単品を導いていく小分類管理がPI値活用の決めてになるということである。
4. PI値をスムースに導入するために
PI値は誰でも原理さえつかめれば電卓ひとつで実践が可能であり、パートから従業員、チーフ、店長、本部、経営者の方までいつでも実践できる。ただし、これを企業トータルとして導入するためにはいくつかの環境整備をかかすことができない。まず大事なことはお客さまと商品との接点をおさえるPI値推進委員会を設立することが課題となろう。現在のチェーンストアーの組織はあまりに機能分化が進み、PI値をもとにトータルに全体を考える組織がはっきりせず、PI値を推進していくことが中途半端になってしまいかねない。そこで、お客さまと商品との接点をおさえ、その情報をもとに企業経営全体への政策立案をはかる組織として、PI値推進委員会の設立はかかすことはできない。基本的には、ここで、PI値活用のルール、すなわち、基準値(目標値)を決めることが課題となる。そして、そのルールの中で、小分類の構築、情報システムの整備、フォーマットの開発、会議体の設置、人事評価制度とのリンク等をはかり、パートから従業員、店長、本部、経営者までトータルな企業全体の活性化に取り組むことが課題となる。
このように、PI値を理解し、実践していくことが、企業全体のお客様の顧客満足度、ひいてはストアロイヤリティーを高めていくことに大きく貢献していくことになる。 PI値の研究はまだほんの糸口についたに過ぎない。これから、客数アップとの関係、粗利アップとの関係、経費ダウンとの関係などが研究開発課題となり、企業経営全体の経営革新運動へと発展していくものと思う。
(食品商業、1996年8月号、掲載記事を加筆修正)
